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Statement

 私たちが目にしている、この「世界」の風景は、その時々の感情や気分によってその色合いを変える。

だから、私たちが同じ風景を見ている時も、私が見ている「世界」と、あなたが見ている「世界」は、決して同一のものではない。「世界」は、見る人の数だけ無数に存在する。

イメージは、常に揺らいでいる。「世界」は、いつだって不確かだ。

2019年から制作をはじめた、「The Book of Kite」は、「本」の形態をした絵画作品だ。中世ヨーロッパの「写本」や、レオナルド・ダ・ヴィンチのドローイング・ノートを、創作の下敷きとしている。

私が、絵を描く理由のひとつは、「世界」の断片を書き留めておきたいと思うからだ。かつて、美術史上の偉人たちが試みたように。(もちろん、彼らの偉業には遠く及ばないのは、重々承知のうえで・・・。)

そんなことを思いながら、絵筆をとって、まっ白い画面を見つめる。

――さあ、何を描こうか?

「世界」は、そこからはじまる。

 

 

 

 

 

2020年3月

田村正樹

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《はじまりのけしき(カーテンの向こうの、馬の脚をもつ少女)》

『 The Book of Kite』より、2019年

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